■ はじめに
私が保有している3メガバンクの2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)決算が出そろいました。3社とも大幅な増益でしたが、通期の見通しを引き上げたのは1社だけで、配当予想は3社とも期初から動いていません。今回はこの3社を並べて、金利上昇が数字のどこに表れているのかを見ていきます。
なお記事の後半では、この3社の決算数値をまとめた比較表と、配当管理シート(Excelファイル)を有料パートとしてご用意しています。
■ 第1四半期は3社とも大幅増益でした
**・三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)
**2027年3月期第1四半期は、経常利益1兆1,179億円(前年同期比57.8%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益8,094億円(同48.2%増)。
・三井住友フィナンシャルグループ(8316)
同第1四半期は、経常利益6,931億円(同43.4%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益5,013億円(同33.0%増)。
・みずほフィナンシャルグループ(8411)
同第1四半期は、経常利益5,989億円(同62.5%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益4,229億円(同45.5%増)。
経常利益の伸び率だけを見ると、みずほが最も大きくなっています。
■ 共通の追い風は「預貸金利回差」の拡大でした
3社の決算説明資料には、国内業務部門の預貸金利回差(貸出金利回と預金等利回の差)が載っています。前年同期からの変化は次のとおりです。
・三菱UFJ(2行合算)0.89% → 1.14%
・三井住友銀行(単体)1.08% → 1.31%
・みずほ銀行(単体)1.04% → 1.27%
いずれも0.2ポイント台の拡大です。貸出金利回が上がる一方で、預金等利回の上昇がそれより緩やかだったことが、資金利益の増加につながった一因と考えられます。金利のある世界が、決算の数字にはっきり出てきた形です。
なお、集計範囲は三菱UFJが2行合算、三井住友・みずほが銀行単体で異なります。絶対水準の単純比較というより、各社の前年同期からの変化を見るための参考比較として捉えています。
■ 通期の見通しを引き上げたのは、みずほだけでした
・みずほは第1四半期の実績を踏まえ、通期の親会社株主に帰属する当期純利益予想を1兆3,000億円から1兆4,000億円へ、1,000億円(7.6%)上方修正しました。前期比では12.1%増となります。
・三井住友は通期予想の親会社株主に帰属する当期純利益1兆7,000億円(前期比7.4%増)を据え置いています。
・三菱UFJは業績予想に代えて「親会社株主に帰属する当期純利益2兆7,000億円」という目標値を開示しており、2026年5月15日公表の目標値から変更はないとしています。
第1四半期の純利益を通期予想(三菱UFJは目標値)で割ると、進捗率は3社とも約30%です(各社の公表値から単純計算)。単純に4分の1(25%)を上回る進捗となっています。
もっとも、四半期ごとに利益が均等に発生するとは限らないため、この進捗率だけで通期計画の達成度を判断することはできません。実際、進捗率が3社ともほぼ同じであるにもかかわらず、見通しを引き上げたのは1社だけでした。
■ 配当予想は3社とも期初から据え置きでした
いずれの決算短信も「直近に公表されている配当予想からの修正の有無:無」となっています。ただし前期実績との比較では、3社とも増配の予想です。
・三菱UFJ:2026年3月期実績86円 → 2027年3月期予想96円
・みずほ:2026年3月期実績145円 → 2027年3月期予想150円
・三井住友:2026年3月期実績157円 → 2027年3月期予想180円(分割前ベース)
※三井住友は2026年9月30日を基準日とし、2026年10月1日を効力発生日として、1株を2株とする株式分割を予定しています(2026年5月13日の取締役会で決議)。中間配当90円は分割前の1株に対する金額、期末配当45円は分割後の1株に対する金額となるため、そのままでは足し合わせても意味のある数字になりません。決算短信でも年間配当の合計は「-」と表記されています。前期実績157円と比較する際は、分割前の1株に揃えた180円を用いています。
■ 株主還元の方針は、3社で少しずつ違います
決算の数字は似た方向を向いていますが、還元の考え方は各社で異なります。
・みずほは株主還元方針として「累進的な一株あたりの増配に加え、機動的な自己株式取得を実施する」と掲げ、配当は毎期5円を目安に増配、自己株式取得は総還元性向50%以上を目安としています。2027年3月期の150円は6期連続の増配になるとしています。また自己株式取得を、2026年5月15日に1,000億円、第1四半期決算と同じ2026年7月30日に1,000億円、合計2,000億円を上限として決議しており、取得株式は全株消却の予定です。なお、これは決議された取得の上限額です。実際の取得状況はその後も開示されているため、決議額と取得実績は分けて見る必要があります。
・三菱UFJは「利益成長を通じた1株当たり配当金の安定的かつ持続的な増加」を基本方針とし、2025年3月期からの3年間を計画期間とする中期経営計画で配当性向40%程度としています。
・三井住友は2026年5月13日、株主優待制度の導入を発表しました。2026年9月30日が初回の基準日です。ただし、Vポイントの進呈には100株以上を1年以上継続保有していることに加え、「Oliveアカウント」の契約や口座残高などの条件があり、申込手続も必要です。株数だけで受け取れる制度ではない点は確認しておきたいところです。なお、株式分割を踏まえ、2027年9月30日以降を基準日とする分については、保有株式数の条件が100株以上から200株以上へ変更される予定です。
■ リスク・注意点
・金利上昇は利回り差の拡大という追い風になる一方、保有債券の評価には逆風となる可能性があります。債券価格は金利上昇時に下落するため、今後さらに金利が上昇した場合には、保有債券の評価や市場部門の収益に影響する可能性があります。なお、3社とも2026年6月末時点で、満期保有目的の債券の評価損益がマイナスとなっています(各社の第1四半期決算説明資料)。
・第1四半期の利益には、政策保有株の売却などによる株式等関係損益が含まれています。毎期同じ規模で出るとは限らない性質の利益です。
・与信関係費用は第1四半期時点では大きな悪化は見られませんが、3社とも決算資料で地政学的な状況を含む不透明な事業環境に言及しています。景気が悪化すれば、今後増加する可能性があります。
■ まとめ・しまちゃんの一言
今回の3社を並べて印象に残ったのは、預貸金利回差がそろって0.2ポイント台広がっていたことです。金利上昇の効果は「なんとなく銀行に追い風」ではなく、こういう具体的な数字として決算に出てくるのだと確認できました。
一方、3社とも第1四半期の利益進捗は約30%と好調でしたが、通期計画を上方修正したのはみずほだけでした。第1四半期の進捗率が似ていても、各社の通期計画に対する見方や、その後の利益の出方に対する会社側の想定は同じではない、ということが分かります。
そして今回調べていて意外だったのが、還元の方針は3社でけっこう違うということでした。同じ「メガバンク」でひとくくりにしていましたが、累進的な増配を掲げるみずほ、配当性向40%程度を置く三菱UFJ、優待を新設した三井住友と、株主への向き合い方はそれぞれです。9月30日は三井住友の株式分割の基準日であり、株主優待の初回基準日でもあります。中間配当の権利確定とあわせて、9月末は3社とも見ておきたいタイミングになりそうです。
⚠️ 配当利回りは株価の変動により毎日変わります。投資判断の際は必ず最新情報をご確認ください。
なお、noteマネーでは三菱UFJ(8306)・三井住友(8316)・みずほ(8411)の株価チャートをリアルタイムで確認できます。ぜひ活用してみてください。
※ 三菱UFJ(8306)・三井住友(8316)・みずほ(8411)については個別の銘柄記事も書いていますので、よろしければあわせてご覧ください。
■ 有料パートのご案内
ここから先は有料パートです。次の2つをご用意しています。
・3メガバンクの決算数値 比較表
損益・通期の見通し・配当・預貸金利回・不良債権比率・株主還元方針を、各社の開示から転記して1か所にまとめています。本文で触れなかった数値も入れています。
・配当管理シート(Excelファイル)
保有株数を入れると年間の受取額が計算されます。株式分割をまたぐ期にも対応していて、記入例として3メガバンクを入れてあります。ダウンロードしてそのままお使いいただけます。
■ 免責
この記事はあくまで個人の体験をもとにした情報提供です。投資にはリスクが伴います。投資判断はご自身の責任のもと、最新情報に基づいて行ってください。数値・情報は執筆時点(2026年8月)のものです。最新情報は各社IR・証券会社サイトでご確認ください。
