■ はじめに
7月に当ノートで「骨太の方針2026×高配当株」を公開しました。ではその方針が実際の予算にどう落ちるのか。それが今まさに動いている「概算要求」です。令和9年度(2027年度)予算の要求期限は8月末日。ちょうど今、各省庁が概算要求を相次いで公表するタイミングです。
■ 概算要求とは何か
概算要求は、各省庁が「来年度これだけ予算がほしい」と財務省に出す見積書のようなものです。毎年8月末が期限で、その後の査定を経て12月に政府案が決まります。つまり8月末は、来年度の政策の方向性が最初に姿を現す時期といえます。
令和9年度予算については、令和8年7月30日に「令和9年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」が閣議了解されました。冒頭には、骨太の方針2026(正式名称「経済財政運営と改革の基本方針2026」/令和8年7月21日閣議決定)等に基づく、と明記されています。骨太記事の続編にあたる回、というわけです。
■ 今年の最大の変化:『「強く豊かな日本」投資枠』
今年の要求基準で目を引くのは、通常歳出とは別に『「強く豊かな日本」投資枠』が創設された点です。閣議了解文には、この枠について「要求上限を設けず、事項要求も含め、所要額を適切に要求」と書かれています。
さらに「予見可能性を高め、継続的な取組を後押しするため、複数年度の計画に基づくものを基本とする」とも記され、経済安全保障上特に重要な分野などは特別会計で別枠管理することを予算編成過程で検討するとしています。単年度でぶつ切りにせず、複数年にわたって政策資金が流れる形を作ろうとしていると読めます。
なおGX、AI・半導体については「GX2040ビジョン」「AI・半導体産業基盤強化フレーム」を踏まえ、特別会計においても要求するとされています。
■ 枠組みの数字(財務省の概要資料より)
令和8年度一般会計当初予算(122.3兆円)をベースにした主な区分は次のとおりです。
・年金・医療等:37.0兆円(自然増+0.39兆円)
・防衛力整備計画対象経費:8.8兆円
・裁量的経費:14.5兆円(+20%の要望が可)
・義務的経費:9.9兆円
・地方交付税交付金等:20.9兆円
・国債費:31.3兆円
裁量的経費に+20%の要望枠があり、そのうえで投資枠には上限がない。全体として拡張的な組み立てになっています。
■ 高配当株投資家として見ておきたい3つの論点
AI・半導体とGX
特別会計でも要求される分野として名指しされています。素材・電子材料といった川上に位置する企業には、長期的に恩恵を受けやすい環境が続くと考えられます。当ノートでは東ソー(4042)と住友精化(4008)を取り上げていますので、あわせてご覧ください。
賃金・省力化への対応
今年の基準は「要求・要望は賃金や調達価格の上昇を踏まえて行い」としており、人件費や調達コストの上昇を織り込んだ要求が前提です。省力化・自動化に関わる分野には追い風になり得る環境とされています。FA・制御分野ではIDEC(6652)の記事をどうぞ。
医療・創薬
年金・医療等は37.0兆円と最大の区分です。厚生労働省の令和9年度概算要求では、「強く豊かな日本」投資枠を活用し、創薬・先端医療や感染症危機対応医薬品等の確保などを重点分野として掲げています。創薬・先端医療では、創薬スタートアップ支援や人材育成、治験・臨床試験体制の強化、AI創薬・薬事審査のための環境整備などが盛り込まれています。医薬品分野では中外製薬(4519)を取り上げています。
また、経済安全保障の文脈で語られる資源・エネルギーの安定確保は、商社の事業領域とも重なります。三菱商事(8058)・住友商事(8053)の記事もどうぞ。
■ まとめ・しまちゃんの一言
政策は株価をすぐに動かすとは限りませんが、「政府がどの分野に継続的に資金を配分しようとしているか」を示します。高配当株を長く持つ立場からすると、単年度の話題性よりも「複数年度の計画に基づくものを基本とする」という一文のほうが重い、と個人的には感じています。
各省庁の概算要求は8月末の期限に向けて順次公表されています。現時点ではまだ全体が出そろっていないため、今後、各省庁の要求内容を横断して確認しながら、政策資金がどの分野に向かうのかをあらためて整理したいと思います。
■ 免責
この記事はあくまで個人の体験をもとにした情報提供です。投資にはリスクが伴います。投資判断はご自身の責任のもと、最新情報に基づいて行ってください。数値・情報は執筆時点(2026年8月)のものです。最新情報は各社IR・証券会社サイトでご確認ください。
