■ はじめに
Jパワーの2027年3月期は年間105円(会社予想)。100円が3期続いたあとの5円増額です。
ただ、この銘柄で判断が分かれるのは増配幅そのものではなく、2025年5月に会社が「30%」の中身を入れ替えたことのほうだと考えています。連結配当性向30%目安から、総還元性向30%目安へ。同じ数字でも、株主に届く形は変わります。
■ 基本データ
・1株当たり年間配当:2026年3月期100円(実績)/2027年3月期105円(会社予想、中間50円+期末55円)
・配当性向(連結・会社開示):2026年3月期30.7%/2027年3月期予想22.8%
・権利確定日:中間9月30日、期末3月31日(公式IR「株式事務のご案内」の基準日)
・株式分割:2020年3月期以降なし(2026年5月15日に自己株式6,713,200株を消却し、発行済株式数は176,337,900株)
⚠️ 配当利回りは株価の変動により毎日変わります。投資判断の際は必ず最新情報をご確認ください。
なお、noteマネーでは電源開発(9513)の株価チャートをリアルタイムで確認できます。ぜひ活用してみてください。
■ 配当方針の読み解き
年間配当は2020年3月期から2022年3月期まで75円が続き、2023年3月期90円、2024年3月期100円。そこから2026年3月期まで100円が3期、2027年3月期が105円の予想です。

公式IR「株主還元」に掲げられているのは「総還元性向30%を目安に、利益水準、業績見通し、財務状況等を踏まえた上で、安定的かつ継続的な還元充実に努めてまいります」。累進配当でもDOEでもありません。
この表現は2025年5月9日に変わったものです。2024年3月期の決算短信までは「短期的な利益変動要因を除いて連結配当性向30%を目安に」と書かれていました。会社は2025年5月13日公表の決算説明会Q&Aで、変更の理由をこう説明しています。「総還元性向30%の水準については、過去数年間において連結配当性向30%を目安としながらも、30%に満たない配当性向になっていた点を反省している」。
実際、配当性向は2022年3月期19.7%、2023年3月期14.5%、2024年3月期23.5%、2025年3月期19.8%と、目安の30%に届いていません。目安を下回り続けたことを会社自身が認めたうえで、分子に自己株式取得を足して30%を守りにいった切り替え、という読み方になります。同じ2025年5月9日に自己株式取得を決議し、2026年3月24日までに6,713,200株・199億99百万円を取得して全株を消却しました。
同じQ&Aで会社は「中期経営計画期間中の1株あたり100円の配当に変更は無い」とも述べていました。ここでいう中計は「J-POWERグループ中期経営計画 2024-2026」で、2024年度から2026年度、決算期でいえば2025年3月期から2027年3月期までを指します。
その後、2026年5月12日の2026年3月期決算で、会社は最終年度にあたる2027年3月期の配当予想を105円へ引き上げました。短信が挙げた理由は「『J-POWERグループ中期経営計画 2024-2026』で掲げた経営目標を達成する見通しであることを踏まえ」。100円を維持すると述べていた期間の最終年度に、目標達成の見通しを理由として増額した、という流れです。
■ 業績トレンド
2026年3月期は売上高1兆1,822億円(△10.2%)、営業利益1,009億円(△27.0%)。一方で経常利益は1,585億円(+13.2%)と増益でした。米国火力発電事業の持分譲渡で持分法投資利益が638億円に膨らんだためです。その下で特別損失518億円(減損損失329億円、固定資産除却損188億円。除却損には大間原子力発電所計画での一部機器の除却が含まれます)を計上し、親会社株主に帰属する当期純利益は585億円(△36.7%)まで落ちました。
2027年3月期の会社予想は経常利益1,250億円(△21.2%)、親会社株主に帰属する当期純利益810億円(+38.4%)。営業利益は1,250億円(+23.8%)で、営業増益・経常減益・最終増益という並びです。経常の減少は前期の持分譲渡益の反動にあたります。第1四半期時点で予想の修正はありません。
■ 株主優待
株主優待制度はありません。公式IRの「株主還元」「株式事務のご案内」「株主になるメリット」のいずれにも記載がありません。ただし「株主になるメリット」には、3月末時点で100株以上を保有する株主への株主通信アンケートに回答するとオリジナルカレンダーが進呈されること、株主限定の会員組織や施設見学会(抽選)があることが書かれています。優待制度とは別の位置づけですが、基準が9月末ではなく3月末である点は押さえておきたいところです。
■ INPEXとの違い
同じく保有しているINPEX(1605)と並べます。業種は電気・ガス業と鉱業で違いますが、大きな設備投資を長い年月で回収し、利益が外部要因で振れる会社が、総還元性向という同じ道具をどう使っているか。この一点で比べられる相手が、保有銘柄のなかではINPEXでした。

INPEXが公式IRに掲げているのは「1株当たり年間90円を起点とする累進配当による安定的な還元に加え、事業環境や財務・経営状況を踏まえつつ機動的な自己株式取得も行うことで総還元性向50%以上を目指し、業績の成長にあわせて株主還元を強化していく」(2025年2月公表の「2025-2027 中期経営計画」の株主還元方針)。同じ総還元性向でも、置き方が三つ違います。
ひとつは、掲げている数字そのものです。50%以上と、30%の目安。利益に対して株主還元に振り向ける水準が、そもそも違います。
ふたつめは下支えの有無です。INPEXは「年間90円を起点とする累進配当」と、配当額の起点まで示しています。Jパワーは起点となる配当額も、累進配当もDOEも掲げていません。会社はQ&Aで「増配は実力利益がある程度上がった段階で判断したい」と述べており、増配のペースは利益の回復ペース次第ということになります。
みっつめは、その数値の置き方です。INPEXは「50%以上」と下限の形で示し、Jパワーは「30%を目安に」と置いています。目安は下回りうる、というのは筆者の推測ではありません。会社自身がQ&Aで「30%に満たない配当性向になっていた点を反省している」と、目安を下回った期間があったことを認めています。
実際の動きも対照的でした。INPEXは2026年8月7日に2026年12月期の中間・期末をそれぞれ54円から56円へ引き上げ、年間112円の見込み(前期100円)。同じ日に、5,000万株・1,400億円を上限とする自己株式取得も決めています。INPEXの記事でも書きましたが、利益が外部要因で振れる会社ほど、起点を置くことの意味が大きくなります。なお権利確定月は6月末・12月末で、Jパワーの9月末・3月末とはずれます。
総還元性向を掲げる保有銘柄は他にもあります。住友商事(8053)は中期経営計画2026で「総還元性向を40%以上」、丸紅(8002)はGC2027で「総還元性向40%程度を目安に」。どちらも記事にしていますが、この4社のなかではJパワーの30%目安がいちばん低い水準です。どれが優れているという話ではなく、還元にどこまで枠をはめている会社なのかを確かめてから持つ銘柄だ、ということだと思っています。
■ 見落とされやすい点
ひとつめは、2026年3月期の配当性向30.7%の中身です。配当は100円で変わっていません。下がったのは分母のほうで、特別損失518億円などにより親会社株主に帰属する当期純利益が前期の924億円から585億円へ落ち、1株当たり当期純利益が325円51銭になった結果です。「ようやく30%に乗った」と読むと逆になります。
ふたつめは、2027年3月期の追加還元がまだ見えていないことです。総還元性向30%目安に対し、105円の配当だけでは配当性向22.8%(会社予想)。執筆時点で2027年3月期の自己株式取得は公表されておらず、会社の適時開示資料の最新は2026年7月31日の第1四半期決算短信です。この差をどう埋めるかは、今後の開示を待つことになります。
みっつめは、2026年の株主総会に株主提案が出ていたことです。2名の株主が共同で定款変更を提案し、気候関連の移行リスクを受けやすい設備投資について、取締役会の投資フレームワークと、計画ごとの想定される削減費用・排出量削減見込みの開示を求めました(2026年4月30日開示)。提案は6月8日に撤回されましたが、超長期の投資を抱えたまま還元を増やす構図に、外から資本規律の目が向いていることを示す出来事でした。
■ しまちゃんの総評
配当額だけを見れば「3期据え置きのあとに5円」で、地味に映る銘柄です。ただ、目安を下回り続けたことを会社自身が認めて枠組みを組み替え、自己株式取得と消却まで踏み込んだ流れは、方針の文言以上に動いている印象を受けます。一方で還元の水準そのものは、総還元性向を掲げる保有銘柄のなかでは低めで、増配の予見性も高くありません。長期の設備投資を抱える会社をどこまで還元で評価するか、という判断が要る銘柄だと感じています。10月に予定されている第2四半期決算が、次の確認どころになりそうです。
■ 最後に
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。よければスキ❤️をお願いします🙏
■ 免責
この記事はあくまで個人の体験をもとにした情報提供です。投資にはリスクが伴います。投資判断はご自身の責任のもと、最新情報に基づいて行ってください。数値・情報は執筆時点(2026年9月)のものです。最新情報は各社IR・証券会社サイトでご確認ください。
