■ 買ったきっかけ——日本を代表する会社を一つ持っておきたかった
数年前、高配当株のポートフォリオを組んでいく中で、「日本を代表する重厚長大の会社を一つ持っておきたい」と思って選んだのが日本製鉄(証券コード:5401)でした。
鉄鋼と聞くと少し地味な印象を持つ方もいるかもしれません。でも日本製鉄は粗鋼生産量で国内第1位、世界でも有数の鉄鋼メーカーです。自動車も、ビルも、橋も、鉄がなければ成り立ちません。「暮らしの土台を支えている会社」という安心感と、高い配当利回りが購入の決め手になりました。
■ 実際に持ってみてどうだったか
正直に言うと、鉄鋼株は株価の値動きが大きい銘柄です。景気や鉄鋼市況の波をそのまま受けるので、保有中も株価はそれなりに上下しました。損益はややマイナスとなっています。
それでも私が持ち続けてこられたのは、配当が下支えになっているからです。日本製鉄は2027年3月期から「1株あたり年24円」を配当の下限とする方針を採用し、2026年3月期も年間24円を実施しています。株価が動いても、配当というリターンが積み上がっていく——これが高配当株を長く持つときの精神的な支えになっています。
なお2025年10月に1株を5株に分割しており、以前より少ない金額から買えるようになっています。
■ 日本製鉄ってどんな会社?
日本製鉄(証券コード:5401)は、2012年に新日本製鉄と住友金属工業が合併して誕生した、日本最大の鉄鋼メーカーです。
・製鉄事業:自動車・建築・インフラ向けなど、あらゆる産業に鉄を供給する中核事業
・エンジニアリング事業:プラントや環境関連設備など
・ケミカル&マテリアル事業、システムソリューション事業:素材やITなど周辺領域
「鉄を作る会社」というシンプルなイメージですが、実際は国内にとどまらず、世界15カ国以上に拠点を持つグローバル企業です。
■ 高配当株として見たときのポイント
権利確定月は3月末・9月末の年2回です。
2026年3月期の配当は1株あたり年間24円(株式分割後ベース)で、2027年3月期も同程度の24円が予想されています。株価が540円台(2026年6月末時点)で推移していることを踏まえると、予想配当利回りはおよそ4%台半ばです。日経平均やプライム市場全体の平均利回りが2%前後であることを考えると、高配当株と呼べる水準です。
ポイントは、会社が「下限配当24円」という方針を掲げていることです。鉄鋼は市況によって利益が大きく振れる業種ですが、業績が落ち込んだ年でもこの下限を守ろうという姿勢は、配当を目当てに持つ側としては安心材料になります。
⚠️ ひとつ注意点があります。2026年3月期は市況低迷などの影響で純利益が大きく落ち込んだため、「見かけの配当性向」は非常に高く計算されます。ただしこれは一過性の要因が大きく、会社は在庫評価差などを除いた「実力ベースの利益」をもとに株主還元を続けています。数字の見た目だけで判断しないことが大切です。
⚠️ 配当利回りは株価の変動により毎日変わります。投資判断の際は必ず最新情報をご確認ください。
■ 足元の注目ポイント——USスチール買収から1年、いよいよ収益貢献のフェーズへ
日本製鉄を語るうえで外せないのが、米鉄鋼大手USスチールの買収です。2025年6月に約141億ドル(当時の為替で約2兆円)を投じて完全子会社化してから、ちょうど1年が経ちました。買収にあたっては、米政府に経営の重要事項への拒否権を持つ「黄金株」を渡す異例の合意も結んでいます。そして今はまさに、買収の成果が数字に表れるかどうかが問われる「収益貢献のフェーズ」に入っています。
足元では動きが相次いでいます。会社は2027年3月期に、USスチールから実力ベースで1,000億円以上の利益貢献を見込むと表明しました。あわせて、買収時に米政府へ約束した投資の一環として、USスチール拠点への具体的な設備投資(数百億円規模)や、イリノイ州の高炉1基の再稼働(2026年の需要に対応するため)にも着手しています。国内の鉄鋼需要がピーク時の半分以下に落ち込むなか、成長の軸を海外に置く姿勢がはっきりしてきました。
さらに2025年12月には、2026~2030年度を対象とする新しい経営計画を公表し、期間中に総額約6兆円(うち海外に約4兆円)を投資して、実力ベースの事業利益を1兆円以上に引き上げる目標を掲げています。この巨額投資が高配当を将来にわたって支える「成長エンジン」になれるか、四半期決算ごとにUSスチールの収益改善が進んでいるかを見ていくのが、この銘柄との付き合い方だと思っています。
⚠️ 最新の業績・配当情報は公式IRページでご確認ください。
■ 投資家として気をつけたいこと
日本製鉄は魅力的な高配当株ですが、鉄鋼という業種ならではの注意点もあります。
まず、鉄鋼は典型的な市況産業です。景気や鉄鋼価格の影響を受けやすく、業績も株価もブレやすい傾向があります。実際、2026年3月期の純利益は前期比で約95%減の171億円まで落ち込みました。中国の過剰生産による市況低迷や、一過性の損失が背景にあります。
さらに、2兆円という巨額買収に伴う借入や統合コストは、当面の財務負担になります。米国の関税政策や中国の安値輸出、原料価格の動向など、外部要因に業績が左右されやすい点も頭に入れておきたいところです。
高配当につられて飛びつくよりも、「下限配当24円がこの先も維持されるか」「USスチールがきちんと収益貢献してくるか」を見ながら、腰を据えて付き合う銘柄だと思っています。
■ こんな人に向いているかも
・誰もが知る日本の基幹産業に投資したい人
・「下限配当」という下支えのある高配当株を探している人
・USスチール買収後の世界戦略に期待する人
・3月末・9月末に配当権利が確定する銘柄を探している人
■ まとめ
日本製鉄は、日本一の鉄鋼メーカーとしての土台と、「下限配当24円」という株主還元の姿勢、そしてUSスチール買収による世界戦略という成長ストーリーを併せ持つ銘柄です。
鉄鋼という業種の性質上、株価の値動きは大きめです。それでも、暮らしと産業を支える会社を高配当株として持ち続ける——そんな安心感を教えてくれた銘柄のひとつです。
この記事はあくまで個人の体験をもとにした情報提供です。投資にはリスクが伴います。投資判断はご自身の責任のもと、最新情報に基づいて行ってください。
数値・情報は執筆時点(2026年7月)のものです。最新情報は各社IR・証券会社サイトでご確認ください。
