■ はじめに

2026年3月期の年間配当は、期初予想42.0円から、2025年11月に44.5円、2026年5月に48.0円へと、2度引き上げられました。ところが、会社が示した配当性向は35.3%、35.3%、35.4%とほとんど動いていません。増配の幅は、利益予想の上振れの幅とほぼ重なっています。

もう一つ、この配当性向35%以上という方針には「2027年度まで」という期限が付いています。会社の資料には、その先は還元方針を改めて策定すると書かれています。9月末の権利確定を前に、この2点を整理しておきます。

■ 基本データ

・1株当たり年間配当金:2026年3月期 48.0円(実績・中間22.0円+期末26.0円)/2027年3月期 50.0円(会社予想ベース・中間25.0円+期末25.0円)
・配当性向(連結):2026年3月期 35.4%/2027年3月期 35.7%(会社予想ベース)
・権利確定日:中間配当 9月30日/期末配当 3月31日(株主優待券の割当日も3月末日・9月末日)
・株式分割:2017年3月期以降、実施していません(公式IRの配当推移表に注記あり)

⚠️ 配当利回りは株価の変動により毎日変わります。投資判断の際は必ず最新情報をご確認ください。

なお、noteマネーでは東急不動産ホールディングス(3289)の株価チャートをリアルタイムで確認できます。ぜひ活用してみてください。

https://money.note.com/embed/charts/3289?type=company&period=fix&end_date=2026-09-25&term=six_month&embed_key=Fl27e9vBN20q0prb

■ 配当方針の読み解き

2026年3月期を初年度とする「中期経営計画2030」(2025年5月9日公表)の還元方針は、決算短信で次のように書かれています。

 持続的な利益成長を通じて1株当たり利益を増大させ、それに伴う株主還元の強化を進めていくことを基本方針としております。具体的な還元方針としては、2028年3月期までの配当性向を35%以上、また、累進配当を継続することとしております。

統合報告書2025では、この方針の位置づけがもう少し詳しく説明されています。前中期経営計画の「配当性向30%以上」から、中期経営計画2030では「配当性向を35%以上に引き上げ(2025年度~2027年度)」と「累進配当を導入」の2点に変わりました。2028年度以降については「還元方針を改めて策定」とされています。

累進配当については、会社は「2013年のホールディングス体制への移行以来、実質的に累進配当を継続してきました」としたうえで、中期経営計画2030で「累進配当を明確に導入する」と説明しています。つまり、それ以前の配当は会社の説明では「実質的な」累進配当であり、明確な還元方針として位置づけられたのは中期経営計画2030から、と整理できます。

公式IRの配当推移では、2019年3月期15.5円、2020年3月期16.0円、2021年3月期16.0円、2022年3月期17.0円、2023年3月期23.5円、2024年3月期31.0円、2025年3月期36.5円、2026年3月期48.0円です。2021年3月期は前期と同額に据え置かれ、配当性向は53.1%まで上がっています。この期に減配はしていません。

■ 業績トレンド

2026年3月期は、売上高1兆2,460億円(前期比8.3%増)、営業利益1,669億円(同18.6%増)、経常利益1,478億円(同14.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益967億円(同24.7%増)。5期連続の増収増益で、いずれもホールディングス体制への移行前を含めて過去最高です。純利益の伸びは経常利益の伸びを上回っています。特別損益は、前期の約68億円のマイナスから約7億円のマイナスへ縮小しており、税引前利益の増加にも寄与しています。

2027年3月期の会社予想は、売上高1兆4,000億円、営業利益1,900億円(13.9%増)、経常利益1,610億円(8.9%増)、純利益1,000億円(3.4%増)です。営業利益の伸びに比べて経常利益・純利益の伸びは小さく、支払利息も2025年3月期の140億円から2026年3月期は209億円へ増えています。

■ 株主優待

あります。公式IRの「株主優待情報」で確認した内容は次のとおりです。

・株主優待券:100株以上が対象。割当日は3月末日と9月末日で、年2回(6月末頃・12月上旬頃)発行。グループのホテル、リゾートホテル、東急ステイ、ゴルフ場、スキー場、渋谷区内の飲食施設などを優待料金で利用できる冊子です。
・継続保有株主優遇制度:500株以上かつ3年以上継続保有が対象。株主さま向けウェブサイトで使えるポイントが進呈されます。

なお、2025年12月5日に「株主優待制度の利用対象施設の変更について」が公表されています。会社は理由を「株主数の大幅な増加により、株主優待枠での宿泊予約が困難とのご意見を数多くいただいている」と説明し、2026年6月発行の優待券から、100株以上500株未満の株主が使えるホテルハーヴェストの対象施設を絞り込んでいます。100株での保有を考えている場合は、この変更後の内容で見ておく必要があります。

■ ヒューリック・野村不動産HDとの違い

同じ不動産で、ヒューリック(3003)と野村不動産ホールディングス(3231)も持っています。ヒューリックは過去に記事を書きました。3社を並べると、配当を決める物差しがきれいに分かれます。

1つ目は、物差しの種類です。東急不動産HDは配当性向35%以上という下限と、累進配当。ヒューリックは中長期経営計画(2026~2036年)で「2029年にかけて配当性向を段階的に45%へ引き上げていくことを目標」としています。東急不動産HDとヒューリックは配当性向を配当の主要な物差しとし、野村不動産HDは総還元性向40~50%に加えて、年間配当金の下限をDOE4%で設定しています。つまり、野村不動産HDは配当の下限を自己資本に紐づけています。

2つ目は、物差しの水準が動く途中かどうかです。直近期の配当性向(実績)は、東急不動産HDが35.4%(2026年3月期)、ヒューリックが41.1%(2025年12月期)、野村不動産HDが41.4%(2026年3月期)。ヒューリックは45%に向けて引き上げている途中で、2026年12月期の会社予想では42.0%です。東急不動産HDは35%以上という水準にすでに乗っており、配当性向が35%台で推移する前提なら、2027年度までは配当の伸びが1株当たり利益の伸びと近い動きになると読めます。

3つ目は、権利確定月と優待です。東急不動産HDと野村不動産HDは9月末・3月末。ヒューリックは12月決算で、6月末・12月末です。優待は、東急不動産HDが100株以上・年2回、ヒューリックが300株以上かつ2年以上の継続保有・年1回(12月末基準)で、野村不動産HDは「株主優待制度を実施しておりません」と公式に記載しています。

どちらを重く持つかは、配当の伸び方に何を求めるかだと思っています。配当性向の引き上げ余地まで含めて増配を見たいならヒューリック、利益が落ちたときの下支えを自己資本側に置きたいなら野村不動産HD、利益の伸びにそのまま配当が付いてくる形を見たいなら東急不動産HD。私は3社とも持っているので、同じセクターの中で物差しの違うものを並べて持っている、という感覚です。

■ 見落とされやすい点

1つ目は、配当性向35%以上に期限があることです。中期経営計画2030は2030年度までの計画ですが、配当性向35%以上は「2025年度~2027年度」、つまり2028年3月期までと区切られています。累進配当は「継続」とされていますが、配当性向の水準がその先も35%以上なのか、変わるのかは、会社がまだ示していません。

2つ目は、増配の出どころです。2026年3月期は、純利益予想が850億円→900億円→967億円(実績)と上振れるのに合わせて、配当も42.0円→44.5円→48.0円と引き上げられ、配当性向は35%台で変わりませんでした。配当性向を物差しにしている以上、期初予想からの増配は利益の上振れとセットです。この構造は、配当性向50%の維持を掲げる全国保証(7164)と近い型で、そちらも記事を書いています。違いは、東急不動産HDには累進配当が加わっている点です。方針の上では、利益が下振れた場合も配当は維持され、配当性向の側が上がる形になりえます(2021年3月期の53.1%は、累進配当が明確な方針になる前の例です)。

3つ目は、2027年3月期第1四半期の純利益です。親会社株主に帰属する四半期純利益は255億円で、前年同期比16.8%の減少でした。ただし営業利益は466億円(同12.7%増)、経常利益は407億円(同8.6%増)と伸びています。純利益が減益となった主因の一つは、前年同期に特別利益として計上した関係会社株式売却益94.66億円が、今期は剥落したことです。通期の業績予想と配当予想は据え置かれています。

■ しまちゃんの総評

東急不動産HDの配当は、方針の文面どおり、配当性向35%前後の水準に置かれてきたように見えます。期初予想から2度増配しても配当性向がほとんど動かなかったのは、その分かりやすい表れだと感じています。

そのぶん、見るべきものもはっきりしています。1株当たり利益の会社予想と、その修正です。次の確認どころは、2026年11月6日に予定されている第2四半期決算で、利益予想と配当予想が動くかどうかです。そして2027年度が終わったあとの還元方針が、いつ、どんな形で示されるか。

9月末は中間配当と優待券の両方の割当日にあたります。長期保有を検討する際の候補の一つになり得ると感じていますが、配当性向の期限の先まで含めて見ていきたいと思っています。

■ 最後に

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■ 免責

この記事はあくまで個人の体験をもとにした情報提供です。投資にはリスクが伴います。投資判断はご自身の責任のもと、最新情報に基づいて行ってください。数値・情報は執筆時点(2026年9月)のものです。最新情報は各社IR・証券会社サイトでご確認ください。